クフ王のピラミッド内部には、「大回廊」と呼ばれる、傾斜した通路があります。この通路の上端は「王の間」に続いていて、その意味では、王の間に続く儀礼用のスペースと考えることもできます。しかし、幅が2メートル、高さが8メートル以上もある、持ち送り構造の通路は、儀礼用の象徴的意味を考えても、大げさすぎないでしょうか? しかも、入口から王の間に向かう途中で、立って歩けないような低い通路が続いた後で、急に現れるのです。
この「大回廊」のような構造は、ギザをはじめ、他のピラミッドでは発見されていません。つまり、とても特殊な構造なのですが、ほぼ唯一のような特殊なものは、ほかの特殊な事情と関係して存在している可能性があります。そこで、クフ王のピラミッドを考えた場合、そのような特殊事情があるとすれば、別の記事で紹介した「王の間」です。この王の間も、他のピラミッドに見られない、特殊な存在であることは間違いありません。
では、どう関係すると考えられるのでしょうか。重要なのは、「王の間」を構成する石材が、重い花崗岩であるということです。一つの石材は数十トン。もしかして、建設中にそれを持ち上げるための傾斜路として大回廊は設置されたのではないでしょうか? もちろん、儀式に使う立派な通路を造ったという意味もあると思いますが、ともかく重い石材をいくつも数十メートル持ち上げなくてはいけない。そのことと関係しているように思うのです。
そこで大きな問題になるのは、「そんな大きな石材をどこから運び入れたのか」という点です。ピラミッド内では、大回廊以外の通路はとても狭い。そこから石材を運び入れたとは考えにくいのです。しかしここで、建設当時のことを考えてみましょう。大回廊の下端は、もしかしたらある時期、屋外に通じていたかもしれないのです。建設中なら、下端のところに資材を置けるような広いスペースを確保でき、そこまでは外部スロープで石材を運んでくることができると思います。ピラミッドが基底部から積み上げられていったのであれば、ブロック層が低い時代が必ずあったはずなのです。
大回廊の中で、どのような木製機材などを使って石材を持ち上げたのか、詳細は私にはわかりません。ただ、大回廊内には段差があるほか、何かを据え付けたような穴が両サイドに並んでいます。また、構造自体もしっかりした直線で、精密であると言われます。大回廊というのが、建設のための「装置」でもあったことを感じさせるのです。ちなみに、あの8メートルという高さは異常にも感じられますが、王の間に使われた天井の梁の長さが6メートル程度だったことを考えると、石材を少し立てて運ぶということが可能になります。そのほうが、持ち上げた後、上端での作業がしやすかった場合もあるかもしれません。
そして、ピラミッド内には「上昇通路」と呼ばれる、大回廊に向かう、狭く、低い通路があります。この通路の下端には、発見時から花崗岩のブロックが3つ詰められていて、これが盗掘防止のための閉鎖装置だと考えられています。しかし、同じような閉鎖装置を3つ置いても、破られるのは時間の問題で、侵入防止対策としては弱いでしょう。私は、これは大回廊での石材の持ち上げ作業で使っていた、「カウンターウエイト」ではないかと思います。ロープ式エレベーターには、人が乗るかごの反対側におもり(カウンターウエイト)がついていて、少しの力でかごを上下できるようになっています。つまり、大回廊に近い長さのある上昇通路は、カウンターウェイトが上下するための機械的な通路だった、と考えると説明がつくことが多いのではないでしょうか。
このように、最終的にピラミッド内部に埋められてしまった大回廊だけを見ると、急に大規模な通路が出現したような唐突さがあるのですが、かつてその下端に平場があり、そこを起点に石材を上昇させていたと考えると、クフ王のピラミッドの内部構造はわかりやすくなると思うのです。
次は、そのような大回廊の設置を含め、クフ王のピラミッドの建設途中の姿を考えてみたいと思います。