「宇宙大航海時代」のミュージアム

2010年代の後半、NHKの『コズミックフロント☆NEXT』では、「宇宙大航海時代」という言葉をさかんに使っていました。宇宙開発が進む現代の状況を、ヨーロッパ近代の大航海時代になぞらえた言葉です。未知の広大な宇宙への夢をかき立てるものでもありますが、普段からミュージアムについて考えている者としては、少し別の感覚があります。

実は、かつての大航海時代というのは、現在のミュージアムの起源ともなるコレクションが形成されていった時代でもあったのです。近代におけるミュージアムの歴史については別に書きますが、いま「宇宙大航海時代」と言われると、この宇宙開発の時代に、新しいミュージアムの歴史が始まるのではないか、という印象を受けるのです。

最初に説明しますと、私の考える宇宙大航海時代のミュージアムの姿とは、主に次の3種類です。

1.宇宙開発に関するミュージアムの拡大・新設

2.月や火星などの移住先における社会教育施設としてのミュージアム

3.テラフォーミングの際の生物環境形成のための研究施設としてのミュージアム

1と2は比較的考えやすいものではないかと思いますが、1は地球上に宇宙関係のミュージアムを増やしたりしようというものです。2は、現在計画されているような月や火星での基地建設に伴い、ある程度の規模のコミュニティが形成された場合に必要になると考えられるものです。

あまり意識されないのが3だと思いますが、火星を改造(テラフォーミング)し、人間が宇宙服なしで生活できるような自然環境を形成しようとする場合、新たに地球から生物を持っていくことになります。その時に、多くの生物種を格納し、保存する「ノアの箱舟」のような施設が出現することになります。これは、倫理的にも重大な意味を持つかもしれない、高度な使命を持った施設です。

ミュージアムというのは、比較的社会の影響を受けず、変化の少ない場所ではあります。そのため、今後も現在のような姿であり続けるように見えるのですが、実は近未来には多くの道があると考えるべきでしょう。これほど宇宙開発が計画されている中で、ミュージアムのことが語られないことは不思議でもありますが、いずれ何らかの形で必要になると考えるほうが自然に見えるのです。